あけまして、おめでとうございます。
2025年から「も」、介護の仕事を取り巻く環境が大きく変わります。厚労省、国が定めた新しいルールによって、介護の現場では今までより多くの仕事が増えることになります。
例えば、介護記録、研修記録、事業所運営の規定をより細かく記録&実践することが必須になったり、職員全員が受けなければならない研修が増えたりします。
一見、これらは面倒な仕事に思えるかもしれません。でも、この記録や研修が、実は利用者さんの暮らしを良くすることにつながっているのです。
具体的な例を考えてみたいです。
訪問介護を利用している田中さん(85歳仮名)は、最初は「人に迷惑をかけたくない」と言って、ホームヘルパーの手伝いを断っていました。ケアマネジャーの山田さん(仮名)は、田中さんの謙虚で力強い気持ちを汲みながら話し合いを重ねました。
訪問ごとに山田さんは、田中さんの面接での場面を細かく経過記録に書き込みました。そして訪問介護事業所のサービス提供責任者へ、伝えました。その温かな記録は、サービス提供責任者から他ホームヘルパーへと生きた言葉で伝達されていきます。
「好きな野球の話をすると表情が明るくなる」
「右手は少し動かしにくそうだが、左手はしっかり使える」
といった具合です。
なぜ人に迷惑をかけたくないと頑なに断っていたのかを、ケアマネジャーの山田さんは考えました。そして、いつ断っても良いから、一緒にやってみよ!と訪問介護が始まることになります。
ケアマネジャーとホームヘルパーの支援チームは、この山田さんの記録をチーム全体で共有し、話し合うことで、田中さんへの関わり方を検討しました。
野球の話をしながらさりげなく声をかけ、関係性を築きながら左手でもできることの多さを、ホームヘルパーは自分の体を使い田中さんに伝え続けました。
「左手だと、じゃがいもがこんなに不格好になっちゃった」と、田中さんとホームヘルパーは笑い合います。
その結果、田中さんは「こんな風に食事ができるなら、手伝ってもらってもいいかな」と考えを変えてくれました。
次の月、ケアマネジャーの山田さんに、田中さんは自分の暮らしが変わったことを誇らしげに話しました。山田さんにとって、初めて見る田中さんのイキイキとした笑顔でした。
また、認知症ケアの研修を受けた後、職員の対応も変わりました。
訪問介護を利用している佐藤さん(78歳仮名)は、長年続けてきた掃除が認知症の進行で難しくなっていました。研修で学んだ「その人の残された能力を活かす」という考え方を基に、訪問介護サービス提供責任者の中村さん(仮名)は支援方法を工夫しました。
例えば、掃除の道具の配置を決まった場所に固定する、拭くだけの単純な掃除を一緒にする、達成感が得られるようカレンダーにマークを付けるなど、研修で学んだことを実践したのです。
その結果、佐藤さんは「自分でまだできることがあって嬉しい」と、意欲を取り戻されました。
このように、記録をつけることで利用者さんの小さな変化に気づき、職員全員で支援方法を考えることができます。また、研修で学んだ知識は、利用者さん一人一人の「できること」を伸ばすヒントになります。
確かに、記録や研修に時間をとられることは大変です。でも、これらは単なる義務ではありません。利用者さんの「その人らしい暮らし」を支えるための大切な道具なのです。
だからこそ、忙しい毎日の中でも、時々は「私たちは誰のために、何のために働いているのか」を考える余裕を持ちたいものです。記録を書く時も、研修を受ける時も、その先にいる利用者さんの笑顔を思い浮かべながら取り組んでいきたいですね。
新しい制度や仕事の増加は確かに負担になります。でも、それらを活用することで、より良い支援ができるようになる。そう考えれば、前向きに取り組んでいけるのではないでしょうか。
最後に、これら記録や研修、事業所運営に関する企画など、それらの準備をする人の存在があります。担当になるということは負担であり、重荷になるかも知れません。
しかし、それらの経験を通じて最も学べるのは、記録を読む人でなく、研修に参加している人ではなく、事業所運営の説明通りにきちんと守る職員でもなく、
記録を書いた人、研修や事業所運営を企画した、その人自身が最も成長できるのです。
今年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。
株式会社中央ケアサービス エールハート小岩 山本大勝
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